かげちんブログ

さてさて、『ドラゴンクエストV』といえば、巷ではしばしば「ビアンカとフローラ、どっちを結婚相手に選ぶか？」で論争が起こるものである。
ウチの通っていたかつての大学の漫画研究部も例外なく「キモオタ」の名に恥じない論争を繰り広げたワケだが、思えば、
ビアンカを正妻、フローラを側室にしていたら、どうなっていたのだろうか？（逆でも可）
そもそも主人公は王位継承権を持つ人間である。いやいや、それ以前にモンスターに支配された世を変えるためには、勇者となる子供は一人でも多い方がいい。世間一般では「浮気は良くない」などと言われているが、あくまで世間一般の話。立場も状況もこれだけ揃えば、むしろ世間は喜んで主人公の一夫多妻を歓迎するのではないか？
彼女たちがそれぞれ双子を産んで、ラスボス1匹へ立ち向かう。勇者4人にその親が3人の計７人。1対7。勝敗は明らかである。ビアンカもフローラも好きな人との子供を産むことができたし、エンディングのメヌエットが流れて、ラスボスを秒殺したプレイヤーもガッハッハ！
おお、これはとても良い名案ではないか？

しかし。
この『ドラクエV』に続き話があるとすれば、ここからが魔王戦など児戯に思えるほど壮絶な戦いになるのである。もう一度言うが、主人公は王位継承権を持つ身。更に言えば、王室の正妃と側室の子供、どちらが大事にされるか？また、ないがしろにされるか？ここまで言えば皆さんの頭の中にも大体の想像は付くと思うが、ウチのシミュレートをあえて書く。

側室の子供たちは、どんなに実力があろうと人望があろうとも、住まいは二の丸、三の丸。同じ勇者の子供であり同じラスボスを倒したというのに、生活や待遇に圧倒的な差が出てくるのである。重臣の新年の挨拶でさえ、まず本家に行き、1月2日にようやくこちらへ訪れてくるという始末。さみしい元旦だ。さらなる博識と剣技をつけても上下関係で本家に勝つことはまず無い。この理不尽極まる歯がゆさとコブシの震えを分家は禁じえないだろう。
一方、本家の堕落は時間の問題である。なにしろ倒すべきモンスター軍はもういない。
にもかかわらず、王室は民衆から「勇者様、勇者様」と崇められ、巨額の税金や賄賂が送られてくる。過去の名声だけで何もしなくてもブルジョアな生活であった。人間、何もしなくていいのなら何もしないものである。魔王を倒した時の正妃の美しさは、数年経った今となっては微塵もない。下町では「あの巨体で魔王を押しつぶしたのではないか？」と陰口を叩かれるほどになった。子供たちも現在の正妃によく似ていた。
堕落しきった本家と自分の実力しか信じなくなった分家。確執が起こるのは当然であり、それに伴う重臣たちの派閥が出来上がるのは自然の成り行きであった。
そこへ一つの奇妙な噂が流れる。分家の勇者がモンスターの残党と密談している、という噂である。噂が噂を呼び、夜な夜な二の丸の窓からガーゴイルの影が飛び立った、という目撃情報まで複数出てきていた。
不吉なことはさらに続く。正妃の急死である。死因は毒殺。事件当夜いつものように巨体を揺るがし、テーブルについた正妃は、成長期の少年も恐れ入るほどの食欲で鹿の肉をたいらげ、冷えた白ワインを咽喉に流した込んだところ、急激に呼吸困難を訴え、料理を吐き出して七転八倒したあげく、刺繍入りの白いテーブルクロスをつかんだまま絶息したのである。
度重なる不吉な噂と不吉な出来事。本家と民衆の驚きはそのまま分家への疑惑に繋がり、また、「本家への宣戦布告」と取られていくのである。
一方、分家ではモンスターの残党が度々、人間王家（本家）打倒のために分家へ同盟を交渉してきていたことは事実であった。しかし、本家から疑惑と憶測に基づいて突然「一族ことごとく死刑」を命じてきたとあっては、断り続けていたモンスターからの交渉も受諾せざるを得なくなった。事実、正妃毒殺の犯人は最後までついに不明だった。
しかし、今となってはもはや誰にも状況を止められない。王家内部の確執から始まった争いは、ついに「完全に堕落してはいるが、形の上では人間社会の味方である本家」対「実力集団だが、モンスターまで味方につけた分家」として、世界を巻き込んだ戦争へと発展していくのである。銀河の歴史が、また1ページ・・。（ナレーター：屋良有作）

ダメだね！やっぱ、浮気はイカンということじゃ。
ま・・ウチはドＳだから、ビアンカを選ぶ。